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第12話

 〜タクシードライバー・TATTOあり〜


 夕日を受けながら、見知らぬ国の、見知らぬ空港に佇んでいる。孤独を意識もするけど、心の奥では一人で生きている自分になんとも言えない感慨もある。とにかく、この時の感覚はとても不思議だった。

 っと。

 ぼーっと佇んでいるばかりではしょうがない。ホテルに行かねば。。。ってタクシーに乗るんだよね。。
 タクシー乗り場を見ると、綺麗なタクシー調度出たところ。で、次のタクシーは。。。ありゃぁ、ボロボロのフォードに、待っている運転手は、、ランニングシャツで白い口ひげを蓄えた、長髪のゴツイ白人。二の腕に入れ墨。まるで、プロレスのスタンハンセン

 きゃ〜。

 でも、これに乗らなきゃならない。おそるおそる近寄ると、彼はじろりと睨む。

「お、おむにほてる、ぷり〜ず・・・」

 と、言うと彼はムスッとしたまま、私のスーツケースを私の手からむしり取り、フォードのトランクに無造作に放り込むと、「乗れ!」とばかりに手で合図。

 こわいよ〜〜〜。

 と思いながら、乗り込む。

 こ、このまま、寂しいところに連れて行かれて、身ぐるみ剥がれて、殺されても、ここじゃ誰も私が居なくなった事に気が付かないよ。。。

 運転中、彼は終始無言。私も無言。重苦しい空気を乗せたタクシーは、それでもどうやら市内に向かっているようだ。

 支払いはどうしよう。カナダではタクシーのチップはアメリカ同様、料金の20%程度だそうだけど、これが日本人には分かりにくい。よく、日本人は暗算が得意なんて言うけど、チップの計算を素早く出来る西欧人の方が計算早いんじゃないの?

 支払いの段でまごまごしていると、あの入れ墨の太い腕でどつかれるんじゃないだろうか?

 そうだ!それに領収書を貰わないと、会社で精算してくれるウチの部の経理担当のコマコマ(独身美人OL・・・よいしょ!)に怒られる。でも、「レシートぷりーず」なんて言ったら。。。

 コマコマに怒られるのも怖いけど、この運ちゃんはもっと怖い。ええい、自腹でもええわ。

 そんなこんなで、極めて緊張しながら車内で過ごした。と、唐突に車は止まった。着いたらしい。

 運ちゃん。むすっとしたまま、紙に$25と書いて私に差し出す。私はさっと計算して10ドル紙幣3枚を差し出す。とてもじゃないけど、「レシートプリーズ(領収書ちょうだい)」なんて言えない。。。。
 震える私の手から30ドルを受け取った運ちゃん、無言のまま車から出る、私も車から出る。

 トランクからスーツケースを取り出した運ちゃん、ゆっくり私に手渡す。そして、手渡しながら、初めてニッコリ笑って「Thank you !」。。。

 。。。なぁんだ、いい人じゃん。レシート貰えばよかった。

(この精算、コマコマの尽力により、ちゃんと会社から貰えました。多謝。)

 ちなみに、タクシー運賃は組合の規定で、空港から市内まで一律25カナダドルと決まっているそうな。
 また、彼がムスッとしてたのは、どうやら私が言葉が分からないのを見越していたみたい。

 さて、ホテル。

 。。。。はぁ、日本を出てから20時間余り。いい加減疲れてきた。。。

つづく・・・