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ピーマンの心皮融着過程

Carpel development in sweet pepper.



 植物では分化した花器が互いに融着し,1枚の花器になる種類は多い.しか花器の融着過程についての観察はほとんどなされていない特にピーマンの心皮発達過程には不明な部分がある.Cochran (1938)はトウガラシの心皮発達に関して,縦断面及び横断面を組織学的に観察しており,心皮は子房の頂部まで完全に融着し),最終的に花柱基部と,胎座の頂部が互いに融着しているように.しかし,詳細な発育過程については述べていない.

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Fig. Carpel development in 'Shin-sakigake' sweet pepper.

1),2): Initiation of carpels, 3),4) Elongation and fusing of carpels,5),6) Development of stigma, style and ovary.

st: stamen, ca: carpel, pl: placenta, sty: style, sti: stigma, ou: ovule, oy: ovary.


 ピーマンの心皮発育過程の走査型電子顕微鏡像を示した.心皮数は2〜3枚であった.花芽発育段階4(雄ずい・雌ずい分化期)において形成された心皮は(1,2),その両側がお互いに融着しながら盛り上がるように子房を形成した(3,4).この時胎座部では胚珠の形成が始まっていた(3).しかし Cochran(1938)のスケッチ(下)にあるような,胎座部からの花柱の分化,胎座の頂部と心皮の融着は認められなかった(3).心皮の先端部は子房の頂部で上方に伸長した.やがて伸長した心皮の先端部は花柱と柱頭に発達し,花柱基部は一旦下方に押し出されるように湾曲した(5).柱頭の形状は3心皮の‘新さきがけ’では三角形になった(6).心皮は花柱内部まで融着せず,花柱の内部は円筒状の細い空隙となっており,この空隙は柱頭まで続いていた(5).更に,胎座の頂部と花柱基部も融着していなかった.

Fig. Carpel development in pepper (Cochran, 1938).

 A) Carpels just prior to fusing, B) Carpels fused, C) Style development complete.

carp;carpel, ou;ovule, pl;placenta, lo;loculus, sty;style

 Cochran (1938)のスケッチでは,心皮が子房の頂部に達した時は心皮と胎座部は分離している.しかし,その後心皮は子房の頂上部で融着しているとし,花柱基部は胎座部と接合しているように示されている.先に示したように,心皮は子房の頂部まで融着していないが,花柱内部にある空隙は極めて細いものであり,花芽の中央部を正確に縦断しないと,その確認は困難である.更に,子房の側面では,心皮の融着部分が子室の隔壁となっていることから,中央部から少し離れた場所で縦断した場合,もしくは切断方向が鉛直方向から逸れて斜めになった場合には,花柱の空隙は確認されず,子室の隔壁が花柱に接合しているように見える場合も考えられ,Cochran のスケッチもこのような試料であった可能性が高いと推察される.


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