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第11話

 〜夕日のワンマン〜


 さて、飛行機はモントリオールへ向けて飛行中。シートベルトサインが消え、飲み物のサービス。さてここで、やらねばならない事がある。
 第1話のりどんの言葉。

「あ、この間渡したカナダの入国証、フォームが変わったらしいので、飛行機の中でもらって書いてね。」

 そう、入国証を書かねばならない。フライトアデンダントの金髪のおねぇちゃんから、入国証を貰う。機内でも説明があったけど、ここからは英語オンリーわからん。で、手元にあったのりどんが作成してくれたフォームを見ながら、書き込む。

 入国目的・・・・仕事なんだけど、「ビジネス」と書くと、あ〜だこ〜だ質問されると言うので、「観光」にする。(ごめんなさい)

 書き込んだ内容を再三チェックしていると、色々不安は増大する。ホテルの予約空港からホテルまでのタクシー今夜の夕食。。。会議出席の手続き。。。

 私の不安なんてお構いなしに、順調なフライトは続き、再びシートベルト着用サイン。NW1106は高度を下げていく。そして、モントリオール・ドバール空港へタッチダウン!!

とうとう、着いた。
(3年前から読んでる人もそう、思ってるか)

 飛行機から降りて、入国検査場へ。さっき書いたカナダへの入国証と、アメリカの入国証の半券が付いたパスポートを提出する。

 えっと、映画の「ジャッカル」(リメイク版)で、ブルースウイリス演じるジャッカルが、変装してモントリオールに入った時、審査官の「入国目的は?」の問いに「マス釣りさ」と答える、あそこです。(実際は、違う場所で撮影したんんだろうけど、あの通りの場所です)

 審査官は、ざっと目を通して入国目的を尋ねることもなく、パスポートにハンコ押して、カナダの入国証の半券をホチキスで留めて、アメリカの入国証の半券を・・・取っちゃった・・・取るとは聞いてたけど、、、帰りは???

 アメリカを出国したことは間違いないけど、それはアメリカでチェックするべきものだろう、、でも、、そんなのなかったし・・・うう〜ん。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

わからん!!

いいや!もう。

 で、回転寿司のオバケの場所に行って、スーツケースを受け取る。今度はちゃんと出てきた。ちょっと安心。そして、「Taxy」と書いたゲートに向かいながら・・・

あ、公衆電話がある。。。

 ここは、、、おっと、VISAカード使えるやん!!

 で、おそるおそる、ホテルの番号をプッシュして、カードを通す。

わ!!繋がった!!。

 受話器の向こうで、コールする音が聞こえる。

 ど、どう言おう。。

ガチャ!

(ホテル)「オムニホテル」


(え)「は、はろー」


(ホテル)「ハロー」


(え)「・・・・・」


(ホテル)「・・・・・」

 ・・・・なんか言わねば。

「あ、あ、あ、あい、うおんと、とう、こんふぁめーしょん、まい、りざべーしょん」(予約の確認したいんやけど・・・と言ったつもり)

 マネしないでね。かなりむちゃくちゃな英語です。この英語で、向こうも「こいつ、英語でけへんな」と分かったのか、ゆ〜くりと喋ってくれる。

「OK、your name please」

 「か、かきぶち。ケイ、エー、ケイ、アイ、ビー、ユー、シー、エッチ、アイ

 この自分の名前をスペルで言うのは練習しておいた。。って言うかわざわざしたんじゃなくて、映画の「48時間」(エディーマーフィー&ニックノルティー)で、悪役が盗んだカードで売春宿から娼婦を呼ぶ電話をかけているシーンがあって、そのセリフが「こちらの名前は、え〜ポルソン。G. P. ポルソン、ピー、オー、エル、エス、オー、エヌ」で、これがなんとなく格好良かったので、自分の名前で練習してたんです。

 で、ホテル

「Certainly! We have received.」(確かに承っております。)

(ほ)

「あ、あい、はぶ、じゃすと、あらいぶと、エアポート。。。え〜・・」
(ちょうど、空港に着いた・・・と言ったつもり)

 ホテルすかさず

「OK!We are waiting for you.Thank you.」(お越しをお待ちしてます)

 で、とりあえず、今夜の宿は大丈夫らしい。一安心。

 そして、スーツケースを転がしながら出口へ進む。

 出口は迎えの人で一杯。

 でも、私は一人。

 モントリオール午後7時30分。まだ日は沈んでいない。(北の方の夏だからね)

 夕日を受けながら、見知らぬ国の、見知らぬ街で一人で居る。

 ここに、私を知っている人は誰もいない。

 頼れる人はこの街に誰もいない。

 この時ほど、「人間って、一人なんや。」と実感したことはなかった。

 夕日がまぶしかった。

 ただ、ただ、不安だった。

つづく・・・