第1話 〜出発までのプロローグ〜
6月5日
BeBeのヴィータにトランクを乗っけて、丸亀駅まで。これから、10時24分発の「しおかぜ6号」、11時20分岡山発の「ひかり106号」、12時46分新大阪発の「はるか27号」を乗り継いで関西国際空港へ向かう。そして、海の向こうへ。
海外出張を命じられたのは、1ヶ月前の5月6日。連休ボケしたところを部長に呼ばれた。
「ちょっと、悪いけど培地温度管理型栽培システムの成果を発表してきてくれや」
「はぁ、ええですよ。で、どこですか?東京?我孫子?」
「ん、モントリオールや」
「・・・モ、モントリオールって、どこでしたっけ?」
「カナダ」
「カ、カ、カナダぁ!・・・もちろん、外国ですよね。」
「あたりまえやんけ」
「で、誰と行くんですか?」
「オマエ一人で」
「手配とかは・・」
「自分でやれ」
自慢じゃないけど、海外旅行と言えば、2月に新婚旅行でハワイに行っただけ。それも、あれはJTBのパックツアーだったので、ホテルの手配、航空券の手配、レストランの予約、空港の送迎からトランクの運搬まで、ぜぇ〜んぶJTBと現地の代理店がやってくれた。しかも、ホノルルなんてヘタすると横浜の米軍基地周辺よりも日本っぽい。
今度はモントリオール。ホテルは学会指定の所を「自分で」手配しないといけない。もちろん航空券も。
ど、どないするねん?
まぁ、落ち着け。順序立てて処理していこう。
まずは、宿舎。これは日本の関連団体の人が「いっしょに取っておく」とのこと。で、日程を伝えたのだけど、上手く伝わってないようなそんな予感が・・・。
航空券。これは知り合いの旅行代理店に頼んだ。だいたい、モントリオールがどこにあるかも知らなかったのだから、どんな経路で行けばいいのかなんて分かるわけがない。
とにかく、直行便はないらしい。これだけでも、日本人があまり訪問しない場所だと分かる。地図を見ると、日本のちょうど反対側にある。
「バンクバーまでJALで、そこからエア・カナダでモントリオールです。JALだから安心だし、エアカナダもJALと提携してるし・・・で、いいね。」
いいも悪いもない。頼るしかない。それでチケット手配を頼んだ。
しかし、翌日、
「ごめんなさい。バンクーバー経由は満席なんです。で、デトロイト経由のノースウエストしか取れないのですけど、いい?」
いいも悪いもない。行かなきゃならんのだ。それしかないなら仕方がない。エコノミー格安チケットで往復12万8千円。
ここで、疑問。バンクーバーからモントリオールだったら、日本から直接カナダに入国することになる。入国手続きもそう面倒ではないだろう。でも、デトロイト経由・・・アメリカに一旦入って、それからカナダとなる。
ど、どないするねん?
代理店のおねぇさん(通称:ノリどん)。
「アメリカで入国申請書の半券もろたら、後は国内線と同じ扱い。カナダは」
「じゃぁ、出国は?」
「カナダ側で入国申請書の半券取られて、後はなんもなし」
「アメリカでは、なんもないの?」
「なんもないと、・・・・思うよ。」
ふ、不安や・・・。
「あ、そうそう、ノースやけど、いっぺんデトロイトでトランク受け取って、もういっぺん預けてね。」
「????」
「いや、デトロイトのバゲッジクレイムで一旦トランク取って、それから国内線ターミナルへ行って、そこでもう一回預けるの。」
「なんで?」
「いや、そうなっている・・・らしい。」
次の日電話
「あ、あのノースやけど、カナダ行きはデトロイトで荷物受け取らなくていいらしいから」
「・・・・どうして?」
「変更になった・・・らしい。」
「じゃ、関空で荷物預けたら、次はモントリオールで受け取ればいいんやね?」
「そうそう。」
また次の日
「あ、この間渡したカナダの入国証、フォームが変わったらしいので、飛行機の中でもらって書いてね。」
「う?」
「多分、フォームはたいして変わってないやろから。」
や、やっぱり、不安や・・・。
モントリオール・・・・。
つづく・・・・