第5話 〜出発までのプロローグ5〜
旅程から考えて、どうしても今回でフライトまでこぎ着けないと、ほとんど大河ドラマか、朝の連続ドラマ並の長さになる。で、今回はちょっと長めになるのだけど、辛抱して読んで欲しい。
13時32分。定刻通り、「はるか27号」は関西国際空港駅に到着した。ゴロゴロとトランクを転がしながら、駅舎を出て空港入り口に入る。登場予定の飛行機は、15時35分発のノースウエスト70便。あまり、時間的な余裕はない。まず、トランクをX線に通してノースウエストのチェックインカウンターへ。
2月にハワイに行ったときは、JTBのカウンターでチェックして、ついでにその場で「ハワイ行きの人はこっちに来て下さい〜!」と呼ばれ、各種書類の説明と現地に着いてからの行動の説明を受けた。
その時、直接航空会社のチェックインカウンターに並ぶ人を横目で見て「わ〜。あの人達は海外旅行慣れしてるんだろうなぁ。かっこいい」と思うと同時に、旅行会社の社員から大声で説明を受けているツアー客の自分をダサイと感じた。
そんな自分がたった4ヶ月後に、たった一人で、航空会社のカウンターに並んでいる。
かっこええやないの。
カウンターには結構長い行列ができていた。どうも、見ているとなにやら、カウンターの処理が遅い。端末を前に、カウンターのおねぇちゃんがしかめっ面をして、一人の客を処理するのに、そうとう時間をかけている。
なんで、こんなに時間がかかるんだ?
さて、私の番。チケットをおねぇちゃんに渡す。一応、「通路側」で座席指定しているはずなので、「通路側ですよね」とディスプレイを睨んでいるおねえちゃんに確認すると、「今日は混んでいるので、ここでは分かりません。搭乗口で聞いて下さい。」との返事。
なんだぁ?普通、チェックインの時に座席って決まるものじゃないの?
渡されたチケットには搭乗口番号はあるものの、座席番号はない。
トランクを預けながらしつこく
「えっと、座席は搭乗口で教えてくれるんですよね?」
「そうです。搭乗口でおたずね下さい。では、次の方・・」
う・・・・。
(後で分かるのだが、決してノースウエストのカウンターのおねえちゃんの対応が悪い訳ではない。)
仕方がない。ここはまだ日本。なんとかなるだろう。
ここで両替をしておこう。向こうでどうなるやらわからない。とりあえず、10万円を5万ずつ、アメリカドルとカナダドルに替えた。ちょっと、替えすぎた。でも、どこの国でも、最後にモノを言うのはやっぱり、現金だろう。替えすぎたのは、手数料がもったいないけどまた、円に替えれば問題ない。
さて、これから出国手続きをしなければいけない。トランクはさっきカウンターで預けたので歩くのは楽。ショルダーバックだけでの移動。
でも、やはりチケットに座席番号がないのは不安。そんな事を考えながら、空港利用料の券を買うため、販売機に2,650円を入れた。
パスポートは大丈夫かな?チケットはあるかな?え〜と・・・・と考えながら、ゲートに向かって歩いていったのだが・・・・
ない!
ゲートの機械・・・地下鉄の自動改札機みたいなの・・・に通す今買ったばかりの券がない!
ふと、振り返ると、さっきの販売機の前で2人連れの女の子が戸惑っている。そう、私は5,000円を販売機に入れて、おつりも券も取るのを忘れたのだ。
あわてて引き返し、お釣りと券を取った。女の子は大笑い。リゲインのCM状態。
こんなんで、この先大丈夫なんだろうか・・・・。
不安はますます大きくなる。
券をゲートの機械に通す。そこには機械1つに1人係官が付いている。人間をつけるのだったら、なんで機械を使ってるんだろう。。。。なんて考える余裕はその時はない。
出国審査場へ行く。写真撮影禁止。広くて、清潔で、薄暗くて、静かな妙な空間。係官はマジメそう。なんだか緊張する。出国カードは旅行代理店がタイピングしてくれたから・・・・おっと!自分のサインを忘れていた。あわてて列を離れ、カウンターでサインを書いて、もう一度並び直し。
次は自分の番。線の内側で待つ。なんだか、ブルースブラザースの冒頭シーンを思い出す。(ジョン・ベルーシが出獄の時、私物を受け取るシーン)
パスポート、航空券、出国カードを添えて窓口に提出。出国カードの半券をちぎって、残りの半分をパスポートにホッチキス止めしてもらう。次にこのカードが取られるのは、
ここに帰ってきたとき・・・・・
特に疑われることもなく、出国審査場を後にする。免税店を横目に見ながら、搭乗口近くまではモノレール。この関空、大阪の人は「泉州のヒコーキ乗り場」と言うらしい(サライイネス「大阪豆ご飯」参照)。
モノレールを降りて、ゲートに向かう。昼食を食べ損ねたので、ちょっとお腹が空いている。でも乗ったらすぐに機内食が出るだろうし、なにより座席番号が決まってない状態でゲートを離れるのは不安。
でも、まだ搭乗の90分前。待っている人も少ない。遠くにうどん屋ののれん。ハラ減った。でも、離れるのはヤダ。カロリーメイトとビスケットも持ってきたんだけど、あいにくトランクの中。どうしようかなぁ。。。。と、うろうろしていると、向こうから胸に見慣れないツアーのバッチをつけたおじさんが、ツカツカと寄ってきて一言。
「Are you Philippina?(あんた、フィリピン人?)」
「ノー! アイム、ジャパニーズ!」
おっちゃん、「オ〜、ソ〜リ〜」と言いながら去っていった。私はよく、外人と間違われる。周りを見渡すと、東南アジアや台湾からの旅行者ばっかり。関空からのフライトなのに、圧倒的に外国人が多い。
(そっか、みんな関空でトランジットして、アメリカに行くんだ。)
搭乗30分前。だいぶん人が増えてきた。ゲート前のカウンターでは、ノースウエストの制服を着たおねえちゃんがなにやら接続作業を始める。
「お客様のお呼び出しを申し上げます。ノースウエスト70便でデトロイトへご出発の・・・・・様、・・・・様、・・・・様。搭乗口カウンターまでお越し下さい。」
と私の名前も入っている。早速カウンターへ。おねぇちゃんに搭乗券を見せる。「はい、こちらの搭乗券に交換いたします。お座席は29Dで通路側です」と、ここでやっと座席番号の入ったチケットへ。
私の格安チケットは、どっかの旅行会社がまとめて押さえた座席なんで、そのなかで席を融通しあうために間際まで番号が決まらなかったらしい。特に私のような一人旅の客は融通のターゲットになるようだ。連れがいないから動かしやすい。
座席も決まり、安心したところで、搭乗。ファースト、ビジネス、エコノミーの順で乗り込む。格安チケットの私は当然エコノミー。
並んでいると、自分の順番が来たので、搭乗券をおねえちゃんに、そしておねぇちゃんがゲートの機械に通す。。。。
ありゃ、通らない?
おねえちゃん、あせる。私も、不安。何度機械をクリアしても通らない。赤のエラーランプが点灯して、チケットは吐き出される。
おねぇちゃん、あわててカウンターの端末を叩く。
「あ、お客様、申し訳ありません。二重登録でした。ただちに新しいお席を用意いたします。」
なんだぁ?
「これが、お客様の新しいチケットになります。」
「はぁ・・・・」
と受け取り、フィンガー(飛行機への通路)を機内へ向かいながら見ると、私の席の列はF。
をいをい、Fって言ったら通路側じゃないじゃない!たしか、ジャンボの座席は、
(ABC |通路| DEFG |通路| HIJ)
ってなってるのに!
後ろを振り返ったが、もう後の祭り。抗議する気力もない。
「しゃーないなぁ・・・」ととぼとぼ・・・フィンガーの道は途中で2又に別れている。
[こっち、ファーストとビジネスクラス][あっち、エコノミー]
(いいなぁ〜。楽なんだろうなぁ。ビジネスクラス。でも、多分ビジネスに乗ることなんて、ないんだろうなぁ)
と、思いながら[あっち、エコノミー]に足を進める。
飛行機のドアの所に、白人のでっかい客室乗務員のおにいちゃんが立っている。エコノミーはドアを入って右手に進む。私も右折しかけると。でっかいおにいちゃんが、私の肩をがっしり握り、
「No. Your sheat is left(ちゃいま。あんさんの席は、左でっせ)」
「え?(・・あ、こっちにもエコノミーのシートがあるのか。番号若いから、もしかしたら、エコノミーの一番前かも)」
チケットの座席番号は9F。。。。と、、、、なんか、ここ変じゃないかい。Fって言ったら、真ん中の列のはずなのに・・・窓際じゃん。コレ。。。。え!マジ。このシートは・・・・
ビジネスクラスやんけ〜!
(AB |通路| CD |通路| EF)
こ、この席で合ってるんだろうか?さっき二重予約って言ってたし、えらい急いで座席の変更してたので、また間違ってるんじゃ・・・・。でかいアメリカ人のおっさんが来て、「ここはオレの席じゃ!どかんかい!ボケ!」なんて、言われないだろうか・・・・。そうだ、スチュワーデスさんに聞こう。。。え〜と、日本人のスッチーは・・・・あ、いたいた・・・と、
ちょっと待てよ!
二重登録じゃ無い場合もあるんだ。その場合、こっちから「すんません、わたいエコノミーの切符だしてんけど、これなんかの間違いやおまへんか?」なんて、言ったらヤブヘビじゃぁないのか?
さて、どうしよう。
と考えているところへ、アメリカ人のおばちゃんが来た。私の方をと、座席の上の番号を交互に確認している。
「9F?」
「い、いえす。」
あちゃ〜。このおばちゃんとダブったのか・・・・・・
「Oh! I'm 9E」
なんじゃい、隣かい。まぎらわしい。
まぁ、でもおちつかん。。。。しかし、搭乗も終わり、シートベルト着用のサイン。仕方なく、席に着き、シートベルトを付ける。そして。。。
ドアが閉められ、エンジン音が高くなる。
独特なジェット燃料の臭いが鼻をつく。
機体はゆっくり動き出す。
滑走路の端。
エンジンは唸り、一気に加速する。
振動。
そして、浮遊感。
とうとう、離陸。
陸地が遠ざかる。
気圧が下がる。
トンネルを抜けるとそこは新神戸だった(爆)。
つづく・・・・